教育経済学というジャンルがあるらしいです。
久しく、『教育の効果測定は出来ない』という主張とか『私の経験では…』と宣わる先生を
目にしてきましたが、こいつは目からウロコ。
科学的根拠に基づいて、投資効果の高い教育政策や家庭での子育てを語っています。
子供を持つ親なら誰もが悩む疑問、
・他人の成功体験は我が子育てにも活かせるの?
・子供をご褒美で釣っても良いの?
・テレビやゲームは悪影響があるの?
・教育投資は、いつがベストなの?
・高等教育は、コストに見合う価値があるの?
・勉強は本当に大切なの?
・少人数学級には効果あるの?
・行き過ぎたゆとり施策で、なぜ格差は広かったの?
などなど興味深いテーマの数々。
前のめりになって読んじゃいました。
ここで語られるデータに基づいた教育効果、トライアスロンのトレーニングにも応用が利きます。
この辺りは、ぼちぼちご紹介します。
『学力』の経済学
中室牧子著
ディスカヴァー・トゥエンティワン刊
1.どこかの誰かが成功したからといって、同じことをしたら同じように成功する保証はどこにもない。
子供を全員東大に入れた体験記に準えて、
どんな教育が良いかと問われても、教育される本人の特性や能力、環境など多くの要因によって左右される。
だから、他人の成功体験なんぞ応用出来ない。
スポーツ専門誌でトップアマチュアやプロコーチ推薦のメニューが紹介されていますよね。
参考にしても実践した事ないな。
三種目の得手不得手、出身競技だけでなく、練習する環境、ペース設定、刺激を受ける仲間の存在によってトレーニングは大きく変わるもんね。
2.直ぐに得られるご褒美を設定することは、『今トレーニングすること』の利益や満足を高める
テストで良い点取ればご褒美と本を読んだらご褒美
どちらが効果的か?アメリカで250校の小学2年から中学3年まで36 000人を調査した
ハーバート大学フライヤー教授の実験結果では、
本を読んだらご褒美を与えられたグループの学力上昇は顕著で、
テストで良い点取ればご褒美のグループは学力が改善しなかったそうです。
差異を生んだポイントは、子供たちがご褒美にどう反応し行動したかです。
本を読むとご褒美のグループは、何をすべきか明確で、成績にご褒美のグループは何をすべきか行動は示されていません。
ご褒美はほしい、やる気もある。しかしどうすれば学力をあげられるのか子供たち自身に分からないのです。
では、成績を上げる方法を教えてくれる人をつけてみたら良いのでは?という疑問が生まれ実験が続きます。
結果、面倒を見てくれる指導者や先輩がいる場合、成績にご褒美のグループも学力が上昇したそうです。
目標のためにどのように努力すべきか具体的に示して導いてくれる人が必要な事がわかります。
転じてトレーニングでは、どうでしょう。
結果にコミットするライザップじゃありませんが、トレーニング方法、メニュー、目標とアプローチ。
導いてくれる先輩やトレーナー、オーディエンスに恵まれている人は例外なく強いです。
自分の事を一番知らないのは自分ですから。やみくもに練習してもダメ。
どうすれば成績をあげられるのか、方法と導いてくれる人がアマチュア選手にだって必要なのです。
話は変わり、ご褒美の是非。
ご褒美は『勉強する楽しさ』を失わせてしまうのか?
先のフライヤー教授が検証していて、ご褒美の有無によって、統計的な有意差は観察されませんでした。
つまり、ご褒美で釣っても良いのです。
自分へのご褒美も然り。
大会の成績に対するご褒美では、成果に結びつきません。
ご褒美出すなら、日々の練習でプロセスに対して施すべき。
一週間のメニューをクリア出来たら、エビスビール。
90%で発泡酒、80%で第三のビール、それ以下はスパークリングウォーターなんてどうですか?
フレームやコンポなど大型投資には、もう少し長期間の設定にするにしても長すぎると効果は薄いので3週間くらいで
やってみようかな。
3.褒め育ては時として害をなす
褒めて自尊心を育むと成績が上がると盲信している人が大勢いますが、成績の良いという原因が自尊心が高いという結果をもたらしていることがバウマイスター教授の論文で証明され、教育界の定説が覆りました
またフォーサイス教授の論文で、成績が悪かった子の自尊心をむやみに高めるような言動『あなたはやればできる』は、逆効果で反省する機会を奪い根拠のない自信を持った人にしてしまい、いつまで経っても成果が上がらない人になってしまうとの事。
反省している人には、そっと見守り、
反省の足りぬ人には指摘してあげる事が宜しいようで。
優しいだけの人から卒業してみようかな。職場でも心がけたいですねー。
4.勉強しなさい、はエネルギーの無駄遣い
親の関わり方でどの程度子供の学習時間の増加に貢献したか調査した結果、
勉強をみたり、勉強する時間を決めて守らせる等、親が手間暇かける関わり方が効果が高く、
勉強するように言ったり勉強したか確認するなど手間をかけないものは効果が低い事がわかりました。
四六時中一緒に関われない時は学校、塾、身近な人に助っ人して貰えば良いそうです。
もうこれから勉強しなさい、って無駄なエネルギー使うのはやめます。
そう言えば、灘高や北野に通う子供達は、勉強しなさいなんて言われないそうです。
言われるようじゃ、その時点でダメだし、言っても無駄な事は立証されているんなら目標下方修正や助っ人を探しましょう。
5.友達が与える影響
学区選びのため引越しも辞さないご家庭があるくらい(マンション広告で学区書いてますよね)ですが、
どんな効果があるんでしょう。
ホックスビィ教授の研究によると学力の高い友達の中にいると自分の学力にもプラスの影響があることを報告しています。
正しく表現すれば、同じクラスや学年の平均的な学力の高低が影響すると言えます。
では、優秀な同級生から受ける影響は限定的で、成績上位層だけがプラスの影響を受けるだけ。学力の高い友達と一緒にいさえすればプラスの影響があるだろうと考えるのは間違いです。
また、習熟度別クラス編成のように同程度の学力で集団形成については、全体の学力を押し上げるのに有効で、特にもともと学力が低い子供達ほど大きな効果をもたらします。
トレーニングも同じ事が言えるでしょう。練習する仲間のレベル、エリート選手の有無、自分のレベルをポジショニングしてパートナーやチームを選ぶなんて事に応用できるはずです。
自分にあったチームや練習パートナー選び、
強くなりたい方は棚卸と見直しが宜しいようで。
6.学校で学ぶべきものは、非認知能力
忍耐力、社会性、意欲的、誠実さ、好奇心など人間の気質や性格の特徴を非認知能力と言います。
一般的には生きる力のようなものです。
勉強ができる、テストの点数が良いという認知能力の形成にも重要な影響を与えているばかりでなく、
将来の年収、学歴、就業形態にも大きな影響があると明らかになりました。
(ヘックマン教授のペリー幼稚園プログラムは1960年代から現在も継続され、卒園生を40年間追跡調査)
プリンストン大学 学長ボーウェン教授らによる大学中退者と卒業者の調査では、学力よりも出身高校のレベルに関わらず通知表(締め切り前に宿題提出、授業での積極的発言を含めた内申点)の良かった学生は中退せずに卒業できていると判明しました。
高校で良い成績をとる過程で身につけた、まじめ、先生と良好な関係、計画性、やり抜く力など非認知能力が卒業後も大学、社会で成功に導いてくれたと言えます。
どんなに頭が良くても自己管理できず、やる気がなく、不真面目、コミュニケーション能力が低い人は社会人で成功できるはずない!
経験的に皆さんもご理解頂けるはずですよね。
内容の半分も紹介出来ませんが、
エビデンスを持って教育効果を測定する話は
子育てとトレーニングの両方にプラスとなると考えます。興味ある方は是非。
昨日のメニュー
ローラー20分
ラン9km
天候不安定につきジテツー見送り。
夕方、ギリギリ雨は降らなかったが弦巻中学校トレーニングルーム、大蔵運動公園に行くには降雨必至。
久しぶりにローラー。
昨日と違って150拍を楽々クリア。